2012年7月19日木曜日

 パイの実殺人事件スピンオフ弐 
「ブラックメールは恋の坂道」~君のパイの実は何カップ?~ 

次の日、HKT劇場。 
 相変わらず、賑やかな面々だ。 
「おはようございまーす」 
 莉乃ちゃんが楽屋へはいった。 
「あっ、指原さん、おはようございます」「おはようございます、おはです、おはよ 
うです、ドーブラエ ウートラ、カク パジヴァーエチェ?おはようでござる」云々と 
挨拶が元気よく返ってきた。よく分からない言語もあったけど、そんなの関係ネエ。 
「あっ指原さん、大変なんですよ」とユウコスこと菅本裕子が近寄ってきた。 
「うん、どした、夜中に変なメールでも来たか」 
「えー、なんで知ってるんです、犯人指原さんですか」 
 んな、アホな、メールはこりごり、とかはブツブツいいつつ 
「いやあ、私の所にね、あったの変なメールが」というと、ハカタの明太っ子が、 
一斉にハモった。 
「私たちにもでーす。」 
 ええ、そりゃ、マズイ、HKTはご存じのように完全未成年が殆どだ。君のパイの実 
なんて、あんなエロメールみたいなのはいかんがな、犯罪じゃ、こりゃ運営に、とさ 
すがお姉さんぶりを発揮する莉乃ちゃんだった。その時、再びユウコスが近づいてきた。 
「ひどいんですよ、夜中になんだと思ったら、みんなは、謎が謎呼ぶハカタのめんた 
い祭りインお台場、とかだったらしいけど、私なんだと思います。」ユウコスが頬を 
ふくらませた。 
「君のパイの実はEカップ、ですよ。ホントになんでしょうね」顔をしかめて言った。 
 ああ、そうなのそうなんだ。莉乃ちゃんは別の意味で顔をしかめた。 
 耳鳴りがする。キンキンキン。目の前がフッと暗くなり、奈落の底へ、濃密な闇の 
世界へ吸い込まれていくような浮遊感に全身が包まれた。瞼の裏にチカチカと博多の 
ネオン街のように何か文字が浮かんでいた。「E、E,E、Eカップ、カップ…」 
「負けた、完全に負けた」手も足も括られたように痺れ、声も出ず、莉乃ちゃんは 
落ちていった。野生の薔薇の香りに包まれ、見たこともない曠野へ… 
  
 あーああ 夢もあります 恋もあります♪  
 この命  風に逆らい 漕ぎ出しました  
 赤い夕日の玄界灘は 波よ砕けろ荒波よ♪ 
 すべて捨てます この海に  
 私の一途が 眠ります♪ 
  
 博多の闇は本当に深くどこまでも暗いのだろうか。もし、そうなら、その闇は玄界灘 
の底深くまで続いているかもしれない。~続く~ 

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