パイの実殺人事件スピンオフ弐
「ブラックメールは恋の坂道」~君のパイの実は何カップ?~
次の日、HKT劇場。
相変わらず、賑やかな面々だ。
「おはようございまーす」
莉乃ちゃんが楽屋へはいった。
「あっ、指原さん、おはようございます」「おはようございます、おはです、おはよ
うです、ドーブラエ ウートラ、カク パジヴァーエチェ?おはようでござる」云々と
挨拶が元気よく返ってきた。よく分からない言語もあったけど、そんなの関係ネエ。
「あっ指原さん、大変なんですよ」とユウコスこと菅本裕子が近寄ってきた。
「うん、どした、夜中に変なメールでも来たか」
「えー、なんで知ってるんです、犯人指原さんですか」
んな、アホな、メールはこりごり、とかはブツブツいいつつ
「いやあ、私の所にね、あったの変なメールが」というと、ハカタの明太っ子が、
一斉にハモった。
「私たちにもでーす。」
ええ、そりゃ、マズイ、HKTはご存じのように完全未成年が殆どだ。君のパイの実
なんて、あんなエロメールみたいなのはいかんがな、犯罪じゃ、こりゃ運営に、とさ
すがお姉さんぶりを発揮する莉乃ちゃんだった。その時、再びユウコスが近づいてきた。
「ひどいんですよ、夜中になんだと思ったら、みんなは、謎が謎呼ぶハカタのめんた
い祭りインお台場、とかだったらしいけど、私なんだと思います。」ユウコスが頬を
ふくらませた。
「君のパイの実はEカップ、ですよ。ホントになんでしょうね」顔をしかめて言った。
ああ、そうなのそうなんだ。莉乃ちゃんは別の意味で顔をしかめた。
耳鳴りがする。キンキンキン。目の前がフッと暗くなり、奈落の底へ、濃密な闇の
世界へ吸い込まれていくような浮遊感に全身が包まれた。瞼の裏にチカチカと博多の
ネオン街のように何か文字が浮かんでいた。「E、E,E、Eカップ、カップ…」
「負けた、完全に負けた」手も足も括られたように痺れ、声も出ず、莉乃ちゃんは
落ちていった。野生の薔薇の香りに包まれ、見たこともない曠野へ…
あーああ 夢もあります 恋もあります♪
この命 風に逆らい 漕ぎ出しました
赤い夕日の玄界灘は 波よ砕けろ荒波よ♪
すべて捨てます この海に
私の一途が 眠ります♪
博多の闇は本当に深くどこまでも暗いのだろうか。もし、そうなら、その闇は玄界灘
の底深くまで続いているかもしれない。~続く~
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